20/06/2026
去年、静岡の蕎麦屋で気になるものを見つけた。
赤い傘の周りに、小さな紙人形が何十体も吊るされている。
中央には
「大人氣」
の文字。
なんだこれは。
縁起物好きとしては見過ごせなかった。
調べてみると、京都ゑびす神社の「人気寄せ(にんきよせ)」と呼ばれる縁起物だった。
毎年1月に行われる十日ゑびす大祭で授与される。
京都の商人たちが古くから店先に飾ってきたものだ。
面白いのは、
この縁起物が「お金」を呼ぶものではないこと。
願うのは人気。
つまり人が集まること。
黄色い札に書かれた
「大人氣」
は「だいにんき」ではなく
「おおいり」
と読む。
歌舞伎や芝居小屋で使われてきた言葉で、
客席が満席になることを意味する。
商売繁盛とは、
まず人が集まることから始まる。
そんな京都商人らしい発想が見える。
さらに調べると、この飾りの起源はもっと古い。
吊るされた白い紙人形は「住吉踊り」の踊り子を表しているという説がある。
住吉踊りは中世から続く芸能で、京都では門付けや祝福芸として広まった。
つまりこの飾りは、
人を呼び込み、
場を賑わせ、
福を招く芸能そのものを象徴している。
京都の商売人は、
商品を売る前に、
まず賑わいをつくろうとしていたのかもしれない。
去年それを静岡の蕎麦屋で見つけた。
そして気になり続けて、
今年の一月、京都ゑびす神社まで買いに行った。
僕は縁起を信じているわけではない。
でも、何百年も続いてきたものには理由があると思っている。
京都の商人たちは、
売上を願ったのではなく、
人が集まる場所を願った。
それが結果として商売になり、
文化になり、
街になった。
HUG COFFEEも同じなのかもしれない。
コーヒーを売っているようで、
本当に作りたいのは
「また来たくなる賑わい」
なのだと思う。