06/07/2026
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【PACHA ― アンデスの感触と記憶の境界線】
写真・文 行貝チヱ
私はこれまで、写真やフォトコラージュを通して
「境界」と「越境」をテーマに制作を続けてきた。
人と自然、内と外、生と死、過去と未来。
私たちは世界を理解するためにさまざまな境界線を引く。
しかし、その線によって区切られた存在同士は本当に
分離しているのだろうか。
私は長い間、その問いを作品の中で見つめ続けてきた。
近年、狩猟や養蜂にたずさわるようになり、その問いはより身体的なものとなった。
野生動物と対峙するとき、私は生命が終わる瞬間に立ち会っているだけではなく、
その命が土へ還り、別の命を支えていく循環の中にあることを感じた。
蜂の世界では、一匹の蜂が集団のために生きている。
そしてその生きる行為は生きとし生けるものをつなぎ、花から森、
海から地球へと視点が広がっていく。個として存在しているように見えるものは、
実は無数の関係性の結び目に過ぎない。
今回のアンデスへの旅は、その感覚をさらに広げた。
オリャンタイタンボの山腹で風に吹かれた時、私はわたしの
境界線が一瞬溶けた気がしたのだ。
石積みも織物も写真も、人が時間に輪郭(フレーム)を与えるための装置である。
それらは異なる技術でありながら、同じ意味を持つ。
存在の痕跡を別の媒体へと写す行為でもあると気づいた。
アンデスの世界観には「PACHA」という言葉がある。
それは時間と空間、目に見えるものと見えないものが結びついた
世界そのものを意味する。この言葉と出会った時、私は
長年追いかけてきた問いに名前が与えられたと思った。
それは、まだ名前によって区別されていない世界でもある。
過去は失われていくものではなく、現在の中に息づき続けている。
遠い祖先の営みも、今を生きる私たちの身体も、同じ空間の中に、
となりあって存在している。
私にとって写真は時間の断片を採集する行為であり、コラージュは
異なる時間やものや場所を出会わせ、新しい空間を作る行為である。
そして織り物は、糸を交差させながらあらたな関係性(結び目)
を生み出していく営みだ。ことなる表現手法でありながら、
その根底には共通した関心がある。
それは、分断されたものをふたたび結び直し、見えないつながりを
可視化することである。本展では、アンデスで受け取った感触や
記憶を出発点に、写真、コラージュ、織りによる作品を展示する。
そこにあるのは旅の記録ではなく、私自身の身体を通して翻訳された
時間の断片である。自然から受け取ったものをそのまま再現するのではなく、
一度身体を通過させ、別のかたちへと編み直していく。
その行為は越境とも呼べるし、過去と現在、こちらとあちらへと、
橋をかける試みでもある。
私はこれまで、境界線の存在そのものを見つめてきた。
しかし今、境界線とは分けるためのものではなく、異なる存在が
出会うための場所なのではないかと感じている。
【境界線で区切りをつけたとしても、存在の重力は等しい】
PACHAという言葉に導かれながら、私は境界の上に立つ。
そのあいだに引かれた線を見つめながら、その線の向こう側に
あるものへと手を伸ばし続けている
【!インカクエスト!-第1章 聖なる谷オリャンタイタンボ-】
会期:7月8日(水)〜7月19日(日)
時間:13:00-17:00
お休み:月・火曜日
会場:dilettante waltz 静岡県三島市緑町1-1 3階
*チヱWS 9:30-12:00
アンデス紋様ぬり絵、裂織、ブリコラージュなど
⚫︎要予約 各回4000円
⚫︎WS開催日 9.10.11.15.16日
チヱ在廊日
7/8.9.10.11.12.15.16.18.19
はと在廊日
7/8,12,15,16,17,18,19
*はと在廊時は【ペルー風ノラ犬似顔絵】あります。
行貝 チヱ
Hato Hatakeiko
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