30/03/2026
読書クラブ35冊目 薔薇の名前 (ウンベルト・エーコ)
「京極夏彦考」と書かれた一冊の書物を、古本市で偶然見つけたのは、今から数年前のことだった。
その頃の私は、ちょうど京極夏彦の小説に深く没頭していた時期である。いわば、世界の見え方そのものが、あの文体に染まりつつあった。だから、その一冊を手に取るのに、迷いはなかった。
それは『幻想文学』という名の冊子だった。その号の特集は「ミステリー×幻想文学」。
思えば、この冊子との出会いが、私の小説に対する嗜好を決定づけたのかもしれない。夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読もうと思ったのも、振り返ればここが起点だった。
私が京極作品の中で最も好んでいるのは『鉄鼠の檻』である。ミステリーと禅という、本来交わりにくいはずの要素が、驚くほど自然に融合している。その完成度の高さには、いまもなお感嘆させられる。
そして、その『鉄鼠の檻』に、いわば土台とも呼べる作品が存在することを知ったのも、この冊子を通してであった。
恥ずかしながら、その時まで私は、この世界的ベストセラーの存在を知らなかった。ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』である。
記号論学者であるエーコが手がけたミステリー小説。舞台は中世の修道院。閉ざされた空間のなかで、修道士たちが次々と不可解な死を遂げていく。それらの出来事は、「ヨハネの黙示録」に沿うかのように連なり、事件の核心は、迷宮のような構造を持つ禁断の文書館に隠されている。
ここで、『鉄鼠の檻』との符合をいくつか挙げてみたい。
続きはnoteで。プロフィールより飛べます。➡️